アテローム血栓性脳梗塞は、動脈硬化によって太い血管が狭くなったり、詰まったりすることで起こる脳梗塞です。
​リハビリテーションの目的は、低下した身体機能を回復させるだけでなく、**「再発を予防しながら日常生活の質(QOL)を上げる」**ことにあります。
​1. リハビリの3つのステージ
​脳梗塞のリハビリは、時期によって役割が異なります。

ステージ時期主な内容・目的
急性期発症〜2週間寝たきりによる筋力低下(廃用症候群)の防止、早期離床。
回復期2週間〜3, 6ヶ月集中的な訓練。歩行や食事、着替えなどのADL(日常生活動作)の習得。
生活期(維持期)6ヶ月以降〜維持・向上。介護保険等を利用したデイサービスや訪問リハビリの活用。

アテローム血栓性脳梗塞後のリハビリは、「焦らず、しかし休まず」が鉄則です。再発予防(血圧・血糖管理)をベースにしつつ、日常生活に組み込める「日々のスケジュール」と、3ヶ月〜1年を見据えた「ロードマップ」の例を提案します。

2. アテローム血栓性特有のポイント:再発予防

アテローム血栓性は、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が背景にあることがほとんどです。そのため、単なる機能訓練だけでなく以下の視点が重要になります。

  • リスク管理(運動強度) 動脈硬化が進んでいるため、急激な血圧上昇は禁物です。医師の指示に基づいた適切な負荷での運動が求められます。
  • 生活習慣の改善 リハビリと並行して「食事療法」「禁煙」「服薬管理」を行うことが、実質的な再発防止リハビリとなります。

3. 具体的なリハビリ内容

  • 理学療法(PT): 起き上がる、立つ、歩くといった基本動作の練習。
  • 作業療法(OT): 手先の動き、家事、入浴など、より生活に密着した動作の練習。
  • 言語聴覚療法(ST): 言葉が出にくい(失語症)や、飲み込みが難しい(嚥下障害)に対する練習。

4. ご家族やご本人が意識したいこと

「脳の可塑性(かそせい)」を信じる 脳はダメージを受けても、適切な刺激を与えることで残った回路が新しいネットワークを作り出します。焦らず、しかし「毎日少しずつ動かすこと」が回復の鍵です。

1. 日々のトレーニング・スケジュール例

「リハビリの時間」を特別に作るのではなく、生活の動きに合わせると継続しやすくなります。

時間帯メニュー内容目的・ポイント
起床時血圧測定、寝たままストレッチ重要:まず血圧を確認。 体をほぐす。
午前椅子に座って足踏み(20回×3セット)大きな筋肉を動かし、代謝を上げる。
食後5〜10分の立ち上がり練習や散歩血糖値の上昇を抑え、再発を予防する。
午後手・指のトレーニング(タオル拭きなど)集中力がある時間帯に細かい動きを。
入浴中お湯の中で手足のグーパー運動筋肉が緩んでいるため、可動域を広げやすい。
就寝前血圧測定、深呼吸(腹式呼吸)自律神経を整え、血圧を安定させる。

2. リハビリ・ロードマップ(目標の目安)

脳の回復と生活への適応を考えた、一般的なステップです。

【第1段階:1〜3ヶ月】「安全な生活の土台作り」

  • 目標: 転倒せずに家の中を移動できる、セルフケア(着替え・トイレ)を安定させる。
  • 重点: 体幹の安定と、正しい姿勢での立ち上がり。
  • 再発予防: 処方された薬を確実に飲み、食事療法(減塩など)に慣れる。

【第2段階:3〜6ヶ月】「活動範囲の拡大」

  • 目標: 屋外への散歩、近所への買い物、公共交通機関の利用。
  • 重点: 耐久力(長く動く力)と、段差や坂道でのバランス訓練。
  • 再発予防: 適正体重の維持。主治医と相談し、運動強度を少しずつ上げる。

【第3段階:6ヶ月以降】「QOL(生活の質)の向上」

  • 目標: 趣味の再開、家事の分担、あるいは職場復帰の検討。
  • 重点: 麻痺側の「実用的な使用(補助手としての活用など)」。
  • 再発予防: 健診を欠かさず、生活習慣を完全に定着させる。

3. ロードマップを成功させるための秘訣

  • 「できたこと」を記録する: リハビリは「できないこと」に目が行きがちです。「今日は昨日より5秒長く立てた」「血圧が安定している」など、小さな変化をメモやアプリに残してください。
  • 専門家(ケアマネ・理学療法士)との連携: 3ヶ月に一度は、目標(ロードマップ)の修正を相談しましょう。
  • 「リマインダー」の活用: 薬の飲み忘れやトレーニングの時間は、スマホのリマインダーを使うとストレスが減ります。