Episode-007:🔬 「効いたように見えた」初期データの統計トリック解説[イベルメクチンの概要]
重要テーマです。
「効いたように見えた」の正体を、統計構造で分解します。
対象は イベルメクチン の初期研究です。
① 小規模試験の“ブレ”効果
初期研究は被験者数が少なかった。
例(仮想モデル):
- 治療群 50人中 1人死亡
- 対照群 50人中 4人死亡
→ 相対リスク 0.25(75%減!)
しかし実数差は 3人。
人数が少ないほど、偶然の影響が大きい。
これを ランダム誤差の拡大 と言います。
② 相対リスクのマジック
「死亡率75%減」と言われると強烈ですが、
- 絶対差:6% → 2%(4%差)
絶対リスク減少は小さい。
相対表現は印象を強くします。
③ 観察研究バイアス
初期にはランダム化されていない研究も多かった。
起こりやすい問題:
- 若く軽症の人に投与
- 併用治療の差
- 早期受診群だけが投与対象
→ 元々予後が良い群だった可能性。
これを 交絡(confounding) と言います。
④ p値ハッキング(多重比較問題)
症状・日数・ウイルス量など
多くの項目を検討すると、
偶然でも1つくらい有意差が出る。
有意差が出た項目だけを強調すると
「効いた」ように見える。
⑤ プレプリント拡散問題
パンデミック初期は査読前論文(preprint)が急増。
- 査読未了
- データ確認前
- メディア先行報道
後に撤回された研究も含まれました。
⑥ メタ解析の罠
メタ解析は便利ですが、
- 質の低い研究を混ぜる
- 撤回論文を含む
- 出版バイアス
があると結果が歪みます。
実際、後に問題研究を除外すると
効果が消えた解析もありました。
⑦ 生存時間バイアス
「早く投与された群」が生存率高く見える場合、
実は:
- 重症化する前に受診できた人
- 医療アクセスが良い人
だった可能性。
薬の効果とは限らない。
⑧ 回帰効果(Regression to the mean)
軽症患者は自然に回復する割合が高い。
投与後に改善しても
自然経過との区別がつきにくい。
⑨ “英雄物語”の強化
- ノーベル賞
- 安価
- 既存薬
という物語があると
小さな効果でも強く信じられやすい。
これは統計ではなく心理の増幅です。
まとめ:なぜ錯覚が生まれたか
小規模試験
+ 相対リスク強調
+ 観察研究
+ プレプリント拡散
+ SNS増幅
= 「効いたように見える」
科学的に見ると
後の大規模RCTでは
効果は一貫して確認されませんでした。
ここが最も重い証拠です。
もしさらに深掘るなら:
- 📊 実際の数字を使ってシミュレーション
- 🧠 なぜ人は小さな有意差に強く反応するのか
- 🔍 メタ解析の読み方講座
- ⚖ 統計的有意と臨床的有意の違い
どこまで行きますか?

